小林カズさんへのインタビュー


小林一雄:元富士通

<インタビュー承諾のメール>

早乙女さん

連絡ありがとうございます。

私の話が面白いか否かは分かりませんが 板倉さんに、30年前に教わったことは以下に集約されます。

 ・思いと事実を分ける整理する

   事実とは、現状ではない

   過去・現在・未来をつないで整理・分析すること

 ・見通しと頑張ること(アクション)を分けて話す

これはZBM(ZeroBaseManagement)の基本で それからの年月、私の仕事・プロマネの根幹を支えてくれた言葉でした。

感謝しています。

技術について言うと、板倉さんに教わったのか他の人に教わったのか分からない事、覚えていないことが多い。

寄稿するのは了解ですが、後はどんなことを話せば良いのでしょうか。

板倉さんの、スキルと、思いと、言葉の、ギャップ、などは面白いと思いますが飲んだ時でないと話せません。

小林 一雄


インタビューメモ(記:早乙女)

1.板倉さんについて

SEは、提案に関するシステム概要把握、見積もり、体制や線表の検討、方式、機能分担、運用、性能、お客の課題に対する問題解決等々、行う事が多岐に渡る。自分はPGMは設計の最後だと思っている。上流重視という人は多いが、上流のみ重視でできると思うようなのはバカである。そういうことを知らねばならない。

板倉さんは、こうした全てについて高いレベルで知っていて、自分でできる。また、構造をイメージして語ることができる。

部分的には、例えば開発や品質管理等について、板倉さんよりすごい人もいると思うが、全てで高いレベルで全てを言えるというのは他にいない。

2.技術について

SEの技術で何が大切と思うかは人によって言い方が違う。例えば、チーム構造論だと言う人もいる。板倉さんの定義する「技術」を確認してそれに合わせてまとめたほうがいい。

自分は、SEの技術とは、ITの技術とマネジメントの両方だと思う。この二つは不可分でそのことを良く知っている必要がある。ちなみに技術について語るなら定義を明確にしておく必要がある。板倉さんも技術というときには、そう思っていると思う。結果をチェックする管理だけをする人は好きでないはず。

自分は技術の中で計画を大切にしていた。マネジメントは計画して、その内容を相手に伝える事。計画はたててから何度か試して精度をあげる。自分は意識して二三度繰り返すようにしていた。板倉さんは無意識に高いレベルの計画を作れる気がする。計画が浅いと繰り返しのループが大きくなる。これは重要なことで、繰り返しの時間が少ない方が勝ちになる。

3.ゼロベースマネジメントについて

板倉さんに教わった大きな事は、事実と類推を分けること。これは、ゼロベースマネジメント。人はやりたいと思うことと現実を混同し易い。これを分けて意識し、なぜそうなのかと思う感性が大事。ここで類推する力、想像力、分析力が重要になる。それらを駆使して前後左右にふる。マネジメントとはこういうことかもしれない。

お客の体制変更についてお客の偉い人に上申したときがあった。板倉さんはプロジェクトの状況を見て、この問題をお客の中の誰に言うべきかを考え、かなり偉い人に話すべきだと判断したと思う。これもゼロベースマネジメント。あとは度胸、周りの情報収集。相手は判ってくれる人か、周りの人はどういう反応をするかなど。こういう点で用意周到でしたたかだとも思う。

4.組織をまとめることについて

全ての人の特性を活かす組織はない。なぜならば優秀ではあっても、考え方が合わないとの理由嫌われ、活躍の場を与えられない、奪われる人もいる。人間の集まりだから仕方がない。

自分は「バラバラでいっしょ」という感覚が好き。自分の考え、やり方でプロジェクト組織を一色にしようと思った事はない。そこまでの力量も自信もなかった。

出来るだけその人のやり方を尊重しようと思って仕事をしてきたつもりだが、全ての人に活躍の場を与えられたとは思っていない。そこまでの自惚れはない。プロジェクトリーダーをやっていた時も、自分がトップという感覚は薄かった。リーダーは単なる役割(配役を決める)と思っている。主役は技術者。

5.板倉さんの近況(板倉塾等)を聞いて

いつまでもそうしたことに興味を持てるところが、すごい。自分はそろそろ疲れて来た。普通は板倉さんの年齢ならそろそろいいと思うだろう。SE技術のようなことが、もともと深く考えていて、好きなのだと思う。板倉さんは人間の見方がきつく、シビアなので言いたいことがあるのかもしれない。

マネジメントだと言って、管理チェックを中心にしてはいない。自分のやりたいことを言い、やる。そういうスタイルだから言うことがある。

6.板倉さん(やその他の達人達)が重視しているものについて

例えば、NTTデータの窪田さんはマネジメントが優れているように見えるが、システムの作りを良く深く知っていることがベースで、マネジメントに重きを置くという出し方をしている。板倉さんも良く深く知っているが、板倉さんならマネジメントというよりもっと現場に入り込むだろう。要は出方の違いで、どちらも作りのことを良く知っているのがベース。

なぜ、そうなったかと言えば、技術や技術の本質に興味があってそれを追い求めたから。管理は必要なものだし、するのは当たり前。重要なのは、設計、アーキテクト、構造、エンジニアリングなど。特に分析する力。これはもともと持っているものと訓練で磨かれたものがある。どちらなのかはわからない。

7.板倉さんを製造する方法

板倉さんみたいな人は作れない。作ってはいけないかもしれない。あそこまで徹底できる人はいない。徹底できない人に板倉さんみたいなことをさせてはいけない。あれだけ強くずっと出せる人は極めて少ない。だから板倉さんみたいな人を作ろうとすべきではない。

育てるべきは、SE技術者だと思う。つまりIT技術とマネジメントの双方を身につけた人材を育てるべきだと思う。